日本肢体不自由教育研究会ヘッダー
 

肢体不自由教育実践 授業力向上シリーズNo 12
「肢体不自由のある児童生徒のための授業」を究める

菅野和彦 監修
全国特別支援学校肢体不自由教育校長会 編著
 

B5判 144ページ

本体価格2,000円+消費税

ジアース教育新社

 本書は、「肢体不自由教育実践 授業力向上シリーズ」の最新刊です。本シリーズの目的について、「肢体不自由の「原点」である「身体の動き」等に困難さがある児童生徒の授業において、大切にされてきた教育実践を次世代の教員に継承すること」と書かれています。

 本書の構成は、冒頭で、肢体不自由教育の指導の要である3つのテーマについて解説しています。後半には、全国から寄せられた22の事例を教科指導・自立活動に分けて紹介しています。

実践の裏付けとなる理論

 「理論及び解説編」では、「肢体不自由のある児童生徒の障害特性を踏まえた自立活動の指導の充実」「肢体不自由のある児童生徒の認知・コミュニケーションの支援」「重度・重複障害のある児童生徒の自立活動」の3章に分け、授業実践の裏付けとなる理論について解説しています。

 忙しい読者の視線は、とかく実践紹介に意識が向かいがちです。しかし、理論を踏まえることで、実践に深みが出ます。本書は、各章が6〜8ページとコンパクトになっています。実践紹介を読んだ後からでも、理論及び解説編を確認することをお勧めします。

自立活動と教科指導の結びつき

 続いて、「実践編」は、「教科指導の部」と「自立活動の部」に分かれています。各実践は、本文、写真及び「授業力向上シート」によって紹介されています。

 「教科指導の部」では、各教科等の時間における自立活動との関連について13の事例が紹介されています。国語・算数(数学)の事例が多くあります。その他、生活・音楽・体育・図画工作の指導についても掲載しています。各実践から、各教科の内容と自立活動の観点から必要な配慮が結びつくことで、実践が深まり、児童生徒の成長につながっていることが事例から分かります。

本文・シート・写真で捉えやすい

 「自立活動の部」では、主に自立活動の時間の指導における実践事例を紹介しています。対象の児童生徒は、重度・重複障害だけでなく、いわゆる知的代替の教育課程や準ずる教育課程の児童生徒を含みます。いずれの教育課程においても、自立活動が指導の要であることが分かります。

 教科指導でも、自立活動の時間の指導でも、対象児童生徒の実態を踏まえることが大切です。本書は、指導の様子を写真でも掲載しています。そのため、対象児童生徒の特徴やそこへの配慮が読者に分かりやすく示されています。

 本書が、目的どおりに、今後の肢体不自由教育を担う方への実践の継承に役立つことを期待しています。

(元東京都立墨東特別支援学校 武井純子)