本書は、重症心身障害(教育領域では、「重度・重複障害」)の子供を対象に教師の関わり方や、実態把握・学習評価を支えるツールが示されています。
編著者は、子供の的確な実態把握、妥当な目標設定を可能とするために「教科の視点による尺度(Sスケール)」を開発しました。
子供の学びを可能な限り国語と算数の視点で検討し、国語は人とつながる力、算数は物とつながる力に関わると捉えました。また「Sスケール」による行動項目の一覧である「学習到達度チェックリスト」を作成しました。
実態把握のための新たな視点
第1章から第3章では、「Sスケール」と「学習到達度チェックリスト」を基盤にして、子供の実態をより詳細にみる視点として、「覚醒」「注意の芽生え」「外界への指向」「探索と注意の焦点化」の程度を段階的に把握していく必要性を述べています。また、意思の表出や表現が微弱な子供との関わり方として、例えば子供が外界をどのように捉えているか、子供が体験している世界を子供の視点でイメージしていくことの重要性を述べています。
第4章では、教師の働きかけに子供がどう注意を向け、応えているかなど子供の体験世界の有り様を「卵のモデル図」というイメージ図を使って論考しています。教師にとって、子供の視点に立って目に見えないもの、形のないものを推測していくことは、「子どもとつながる糸口を見つけ出す」手がかりになるでしょう。なお、編著者は、子供と一緒に活動しながら、子供の体験を推測し、子供の体験を「言葉」にしてみることを勧めています。
学びを支える「受止め・対応リスト」と「評価シート」
第5章から第7章では、「Sスケール」の発達段階の意義に、レベル要素の細分化など新たに追加した発達レベルの要素を、本書では「受止め・対応リスト」として提案されています。このリストによる実態把握の具体例として、小学部児童の事例が示されていて活用の仕方は分かります。また、本書では、この「受止め・対応リスト」を活用する際に、記録や評価情報の記載ができる「受止め・対応の評価シート(『評価シート』)」の開発も紹介されています。
第8章では、「受止め・対応リスト」と「評価シート」の活用事例として、特別支援学校児童の実態把握について事例として報告されています。
本書を通読すると、教師には、子供と一緒に創造性のある「やりとり」が必要であり、感じ取ることの意義を痛感します。子供のもっている力を捉える視点について手がかりを得ることができるでしょう。
(日本肢体不自由教育研究会 尾ア 至)
|