本書は、特別支援教育に関わる教員や学校体制への支援の充実を目指して、愛知県豊田市教育委員会が独自に配置している特別支援教育アドバイザーによる指導・支援の事例集です。特別支援教育アドバイザーは、特別支援学校の校長や教頭を務めてきた経験を生かして、学校全体を理解した上で、障害や特性等に応じて専門的なアドバイスを実施します。その実践の成果が本書に収録されています。
第一章では、特別支援教育の現状と課題について、全国的なデータを用いながら通常の学級・特別支援学級・通級による指導の現状と課題について取り上げて概説しています。本章では、その他の特別な配慮が必要な児童生徒として、外国にルーツのある子供、不登校や登校しぶりの子供、医療的ケアを必要とする子供も取り上げて、多様な実態の子供たちが在籍している学校の現状と課題を幅広い視点で確認することができる内容になっています。
第二章では、愛知県豊田市の特別支援教育のサポートシステムが紹介されています。豊田市の特別支援教育に係る現状に触れながら、関係機関との連携やネットワークの構築、そして本書の執筆者のアドバイザーの役割などについて紹介されています。各自治体の実態に応じて、特別支援教育の体制整備が進められ、様々な施策や事業が展開されているかと思います。豊田市のシステムは、読者の方の所属自治体のシステムとは異なるかもしれませんが、域内のネットワーク構築や人材・資源の活用を考える際の参考になるでしょう。
第三章は、障害の理解と支援というタイトルで、特別支援教育アドバイザーが実際にサポートした事例のうち、弱視、難聴、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、言語障害、自閉症・情緒障害、学習障害の子供たちに焦点をあてた、全14事例が紹介されています。相談の経緯、アドバイスの内容、使用した教材や指導場面、環境整備の状況などをカラー写真付きで解説しています。肢体不自由の実践を見てみると、四肢欠損の児童へのサポートが載っています。これまで四肢欠損の事例に触れる機会は多くありませんでしたが、本書を読んで脳性まひ児とは違った視点で関わる必要性を学びました。掲載されている事例は、日頃の指導の手立てや配慮を考える際の参考にもなりますが、特別支援教育コーディネーターの方などが展開する支援の視点や方略なども学べる内容かと思います。
この他にも、コラムのページも多数設けられており、特別支援教育の理解を深める有益な情報が詰まった一冊となっています。幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた指導・支援の充実と発展に、本書を活用してみるのはいかがでしょうか。
(文教大学准教授 北川 貴章)
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