肢体不自由教育を網羅する内容
これまで、重度重複障害児教育の入門書として「目からウロコの重度重複障害児教育」(2018年発行 ジアース教育新社)や、「かゆいところに手が届く重度重複障害児教育」(2022年発行 ジアース教育新社)を上梓してきた著者が、今回は肢体不自由教育に必要な知識をまとめた解説書を刊行されました。
本書は、多くの大学で肢体不自由教育に関する講座としている教育課程や制度、自立活動、病理、生理、解剖学、運動機能など、30コマ分の授業の内容を15章にまとめ、豊富な写真や図も活用して、解説しています。
第2章「運動機能と解剖学」や、第10章「摂食・嚥下指導」などに引用されているイラストは、手書きのシンプルなイラストですが、解剖の写真やCGよりもとても見やすく、理解を助けてくれるものになっています。
教育学部で特別支援教育を学んで、教員になった方も、肢体不自由児に対する指導支援のあり方に戸惑うことが多いということは、時折耳にします。それは、特別支援学校の多くが知的障害の特別支援学校であり、実習等で肢体不自由のある指導生徒に触れ合う機会が少ないからではないかと、筆者は推測しています。
触れ合った経験が少ないので、実際の場面で「どう食べさせたらいいかわからない」「身体の取り組みで、子供の体にどう触れたらいいかわからない」などの壁に突き当たってしまいます。
動きを体験してみること
本書の内容をもう少し詳しく見てみましょう。
「摂食・嚥下指導」は、第10章の理論編と、第11章の実践編で扱われています。
実践編では、お菓子などを使って、一人でも摂食の体験ができ、咀嚼の確認や、鼻呼吸の必要性、介助して食べさせる時の細かな注意と、なぜそうしなければならないのかについての解説が示されています。「口の奥に食物を入れると、丸のみを学習してしまう場合がある。だから、食物を奥に入れてはいけない」というように、体験をしながら、理解できるように導いています。
もちろん、この体験だけで摂食・嚥下指導ができるようにはなりませんが、「紙面での学習より興味・関心をもって取り組めると思います」という著者のメッセージに共感します。
特別支援教育の専門書は、書店に数多く並べられています。しかし、肢体不自由教育についての専門書はわずかです。肢体不自由教育の専門性が、多岐にわたる中、どのような知識や技能を身に着けていけばよいのか、本書はそんな指針にもなるでしょう。
(元東京都立墨東特別支援学校 武井 純子)
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