本書は、 重複障害児の指導にあたって必要な基礎的・基本的な事項、 指導計画の作成や指導の実際例等をまとめたものです。
改訂された新しい学習指導要領では、 重複障害児の指導にあたっては、 個別の指導計画を作成する必要のあることが明記されました。 そのため、 本書では指導計画作成の基本的な考え方から作成の手順、 そして指導計画作成の実際について、 多くのページを割き、 図表や具体例を示しながら詳しく、 そして分かりやすく説明しています。
個別の指導計画に基づいた指導の重要性については、 すでに指摘されているとおりで、 各学校においても工夫をしながら個別の指導計画に基づいた実践がす すめられてきていると思います。 ただ、 「個別の指導計画作成が個別な考え方ですすめられては……」 (三浦, 1999) という危惧もあるように、 指導内容の各学部間における系統性や発展性という点からも、 学校全体として作成の観点を共通理解することも大切なことだと思われます。
重複障害児に対しては、 柔軟な対応が可能なように、 学習指導要領に重複障害者等に関する特例が示されています。また、 指導に当たっては、 「個に応じた指導を充実するため、 指導方法や指導体制の工夫改善に努めること」 や 「個別指導を重視するとともに、 授業形態や集団の構成の工夫、 教師の協力的な指導などにより、 学習活動が効果的に行われるようにすること」 などが学習指導要領の配慮事項に示されています。このような規定を、 どのように指導計画に盛り込んだらよいか、 という点についても本書にはたくさんのヒントが詰まっています。
本書では、 このように指導計画作成の基本と、 その実際に重点がおかれていますが、 最初の三つの章において、 重複障害児の教育の意義、 重複障害児の理解、 重複障害学級の学級経営に関して説明がなされています。
児童生徒の実態把握の観点や具体的事項、 その結果の活用は現場ですぐに役立つものと思います。 そして、 最後の二つの章では、 個別の指導計画に基づいた指導の実際例が示されているとともに、 教育課程実施上の配慮事項がまとめられています。本書のように、 重複障害児の指導について正面から取り組まれた本は今までほとんどありませんでした。
一段と顕著になってきている子どもたちの障害の重度・重複化、 多様化に適切に対応し、 個に応じた指導を充実させていくために、 本書は大変参考になるものと思います。 ぜひ活用してください。
東京都立江戸川養護学校教諭 吉川 知夫
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