「障害が重くてもコミュニケーションしているはず、何とかそれを豊かにできないだろうか。」
私たちはこんな思いから子供たちの世界を広げようと工夫しています。言語・文字、身振りなどでやりとりが困難な子供たちと、互いに意思・感情などを伝達し合うためには、コミュニケーションの環境を整備する必要があります。本書では、コミュニケーション支援の具体的な技術の解説書として、実践例が数多く紹介されています。
【第1章】特別支援教育におけるコミュニケーション支援
AAC(Augmentative & Alternative Communication拡大代替コミュニケーション)、IT(情報技術)、ICT(情報コミュニケーション技術)、AT(アシスティブテクノロジー)の概論や、教育課程の位置づけについて分かりやすく紹介しています。
【第2章】身近なおもちゃを活用したコミュニケーションの広がり
市販のおもちゃを利用した活動について紹介しています。工夫次第では百円ショップの商品を改良したものなど、身近で安価な材料から始められる取組も魅力的です。また、自分の力でおもちゃ遊びなどが難しい子供のためのインターフェース(スイッチ)の工夫なども紹介しています。
【第3章】シンボルやVOCA(ヴォカ)を利用したコミュニケーション
自分の考えを表出する手段としてのシンボル(絵カード)と、簡単なスイッチ操作一つで音声を出力することができるVOCAについての取組、コミュニケーション環境の開発とその維持についての配慮事項にも触れています。
【第4章】コンピュータを活用したコミュニケーション
コンピュータの活用が身近になった現代社会において、教材・教具及び支援機器としてコンピュータが有効な手立てとして活用できることを紹介しています。
【第5章】コンピュータを使った学習支援
子供たちに対して、市販からフリーまでの学習ソフトウェアとその活用法について紹介しています。
【第6章】 ネットワークを活用したコミュニケーション
子供たちはコミュニケーションの場として、近年爆発的に普及したネットワークを利用しています。一九九六年から活動を開始した『チャレンジキッズ』の取組を中心に、学校間のネットワークによる交流や授業展開について紹介しています。
【第7章】 AACから情報教育までの目標チェックリスト
子供たちの認知やニーズにかかわらず、コミュニケーションに様々な場面や時間で取り組み、メディアの活用などにより、情報活用能力を育てるという視点でまとめられています。
自己決定やコミュニケーション能力は、子供たちのこころの自立に不可欠です。本書の実践例を参考にし、更に工夫を加えることで子供たちのコミュニケーションがより豊かになるかもしれません。ぜひ一読をお勧めします。
筑波大学附属桐が丘養護学校 大川原 恒
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