二〇〇一年七月のWHO総会においてICF(国際生活機能分類)が採択されました。また、二〇〇二年十二月の「障害者基本計画」では、障害の理解や適切な施策推進等の観点からICFの活用方策を検討する旨が記されました。
「特殊教育」から「特別支援教育」への移行が進められる中、一人一人の教育的ニーズに応えるために、子供を中心とした多くの専門職、家族間の連携が必要不可欠になっています。ICFでは、従来の障害ではなく生活上の困難さに注目すること、多くの専門職種間の共通言語となりうることが特徴としてあげられます。
このICFについては、その理念が広まりを見せる中で、実際の活用の仕方が分かりにくいとの声も聞かれるようになりました。そこでICF活用の実用書として、使う側の立場から編集されたのがこの本です。障害のある子供を支援する様々な場面で、ICF活用の試みが紹介されています。
ICFの概念と活用に向けて
第一章では、ICFの概念枠組みが「人間と環境との相互作用モデル」であり、人間の「生活機能」を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の三次元に区分し、これらの「生活機能」は一方では「健康状態」に影響され、他方では「環境因子」に影響されるとされています。さらに、ICFの分類と「評価点」についての概略が説明されています。そして、今後の幅広い活用へ向けて、ICFチェックリストの概要や活用にあたっての工夫、想定される課題と対処方法が、第二、三章に続く実践例の紹介と合わせて示され、より具体的な理解への道標となっています。
ICF活用の実際と今後の可能性
第二章では、実際にICFを活用した取組として、「他職種間連携のツールとしてのICF実用化の試み」「高等部における移行支援での活用」「評価ツールとしてのICF活用例」等が紹介されています。
第三章では、当事者や家族、支援団体の立場から見たICF活用への期待と、養護学校をはじめ、リハビリテーション医療、福祉・介護、保健、就労支援等、様々な視点から見たICF活用の可能性について検証・整理されています。
この本への意見や感想は、教育以外の様々な分野からも寄せられているそうです。「共通言語」を生かした実践の手応えが報告される一方、現行のICFには、生活の主役である本人の気持を表す内容が含まれていないなど、改善が期待される点も指摘されています。ICF活用の実用書としての本書の利用と、多様な分野での実践を積み重ねて、「多くの専門職種間の共通言語」として実践に役立つICFを目指していけたらと思います。
なお、発達段階初期や児童期に対応するためのICFCY(ICF version for children and youth)最終版が近く出る予定です。
筑波大学附属桐が丘養護学校 一木 薫
|