本書に出てくる教材・教具はすばらしいもので、「ここはこうすれば良いんだ!」、「これはこういった使い方ができるんだ!」といった驚きの連続で、タイトルの通り、授業のアイデアとヒントを得ることができます。また、学習場面にとどまらず、日常生活の場においても子供のQOL(生活の質)を高めるヒントが数多くあり、参考になります。
ATとAACの考え方を広める
本書は、障がいの重い子供へのAT(支援技術)とAAC(補助拡大代替コミュニケーション)の考え方を普及する会のマジカルトイボックスのメンバーが執筆しています。初めにAACの説明があり、学校での学習や生活場面ごとに教材・教具やアイデアが写真やイラストを使って具体的にわかりやすく書かれています。「スイッチの工夫」「インターフェイスの工夫」「フィッティングの工夫」「生活」「遊び・ゲーム」「コミュニケーション」「栽培」「音楽」「美術」「調理」「一〇〇円ショップで支援の工夫」「パソコンの活用」という項目です。
コミュニケーションを育てる
初めは、肢体不自由児向けに書かれたものといった先入観でページをめくっておりましたが、「障がい」に関する考え方やコミュニケーションを育てることなど教育の根底のところを改めて気づかされました。自分で枠を決めてしまっていたことを恥ずかしく思いました。
教材・教具だけではなく心のつながりも重要
生活の項目では、子供が自分が見たいビデオを要求ばかりしている事例が紹介されていました。親とのスキンシップの時間を増やすことで、その要求行動は改善しましたが、ビデオを子供が自分で見られるような教具を作製するというのが解決方法ではなかったというところに、子供が親との心のつながりを求めていたというところに気づかされました。
子供に要求する作業を減らす
また、フィッティングの工夫の項目に、「子供ができるように援助することばかりでなく、子供に要求する作業を軽減することもフィッティングの工夫です。」と解説がありました。子供の実態から、できることできないこと、できそうなことを取捨選択し、授業を組み立てることを怠っていたのではないかと気づかされました。
根底に熱い思いが流れている書籍
この本に紹介された教材・教具を作られた方の思いが、本書の根底に流れています。その熱い思いを受け継いでいきたいと思いました。本書は、肩肘張らず、すっと読み出すことのできる本であり、教育に限らず、子供と接する機会のある方に幅広く読んでいただきたいと思います。
神奈川県立伊勢原養護学校 江口 智
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