一 実践から生まれた本書
本書は、深遠な子供の見方や教材開発の考え方などを基盤にして、ことば・文字・数の基礎となる学習の実践を通して、著者が学んだ支援内容、方法、教材などを紹介したものです。
二 豊富な教材の紹介
本書では、創意工夫された教材が、学習の系統を踏まえながら、三六八枚の図で示され、豊富に紹介されています。本書の教材は、ある子供のある課題解決のために開発されたものであり、その積み重ねによって、多種多様な教材が製作されたと考えられます。
三 謎解きを味わう説明文
実践を通して創意工夫された教材や学習法が、具体的な教材の写真やさし絵を用いて、明解に述べられています。平易な文章で書かれていますが、記述内容は、系統性を踏まえた専門性の高いものになっています。説明文と教材の写真を見て、考えながら、読み進めていく過程は、謎解きを行っているような感じを覚え、支援のヒントが得られることに気づきます。
四 きめ細かな説明内容
第三章では、六八の課題について、三二四枚の図を用いて、きめ細かく説明されています。例えば、初期学習の「玉入れの学習(その1)」では、六つの図を使い、@目的 A教材 B教材の楽しさ C支援方法 D行動観察のポイント E教材の工夫 F配慮事項の七項目に分けて説明しています。
五 系統が分かる章立て
章立ては、次のとおりです。
第一章 ことば・文字・数の基礎学習
第二章 ことば・文字・数の基礎学習の内容と方法
第三章 ことば・文字・数の基礎学習と教材の活用
1 教材の役割
2 日常生活行動の学習
3 課題学習
@ 初期学習
○ 目と手の使い方の学習
A 概念行動形成の学習
○ 位置・順序・形の学習
○ 記号操作の基礎学習
B 記号操作の学習
○ 数の学習
○ 文の構成と計算の学習
六 本書はヒント集
著者は「……本書を活用する方は、一つのヒント集のように本書を考えられて……」(あとがき)と述べています。多種多様に紹介されている教材の寸法が記していないのは、実践する方の一人一人の子供に合わせた工夫に委ねられていると考えられます。
七 本書活用の勧め
本書は、初任者には入門書としての役割を果たし、経験者には、疑問や課題を解決するためのヒントが得られる高度な専門書の役割を果たすと考えられます。
一層適切な支援を行い、子供たちとともに豊かな成就感のある学習をしていただくために本書の活用をお勧めします。
元東京都立北養護学校長 林 友三
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