近年、教育をめぐる大きな変革の波を受け、特別支援教育に関する出版物は多く発刊されています。その中で本書は、生涯発達的視点を基盤に据え、在学期間における支援にとどまらず、就学前から学校卒業後までを視野に入れた子供と家族への支援、専門機関、地域との連携の在り方が提示された、指導者のためのより実践的な書籍となっています。
第1部 特別支援教育における発達的視点の重要性
発達障害児者への支援における発達的観点に関して、発達を基盤に据えて人を理解することの重要性や、生物学的側面と社会・文化的側面の両方から子供を捉えることの重要性が示されています。
第2部 特別支援教育における発達アセスメントと支援
(1)認知発達のアセスメントと支援、(2)コミュニケーション・社会的スキル発達のアセスメントと支援、(3)行動問題への対応、というテーマに分かれ、テーマに沿った発達の異なる問題に焦点が当てられています。
発達メカニズムの理解の重要性、アセスメントと支援における日常性の問題、アセスメントにおける社会・文化的規範と子供にかかわる保護者や教師への支援の重要性が指摘されています。
第3部 発達障害への支援における発達的視点
広汎性発達障害、アスペルガー症候群、LD、ADHD、さらには「特殊教育」の対象となっていた聴覚障害、視覚障害、知的障害、重度・重複障害各障害に触れながら、単に各々の障害の特徴を紹介したものではなく、学齢期の支援にとどまらず、乳幼児期からの一貫した支援、子供を取り巻く人々に対する支援の重要性が、具体的に展開されています。
第4部 生涯発達支援と連携
(1)乳幼児期、(2)学齢期、(3)思春期・成人期に分けて具体的な実践を通し、生涯発達支援という時間軸に沿った生涯にわたる支援の継続性という「タテの連携」と、各々の時期における関連機関との「ヨコの連携」について、その重要性が指摘されています。
各々の機関が、自分たちの責任を果たした上で、関連機関がどのように組織的につながっていくべきなのか、学齢期においては「特別支援コーディネーター」の役割の重要性についても取り上げられています。
第5部 特別支援教育の今後の課題
見過ごすことのできない問題や、専門性を高めるための研修の在り方について触れられています。
本書は、今私たちが抱える問題を解決していくためはどうすれば良いのか、様々な視点から考えていくための参考になるものと思います。発達障害をもつ子供に対してだけでなく、共に生活する保護者等に対する支援も視野に入れ、臨床発達的支援の在り方について考えていきたいものです。
東京都立墨東養護学校教諭 矢 野 祐 子
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