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一人ひとりの子どもに学ぶ
教材教具の開発と工夫

障害児基礎教育研究会編
 
B5判 134ページ 税込価格1,995円 学苑社
 本書は、水口浚氏をはじめとする障害児基礎教育研究会の会員が、長年の実践をもとに、障害の重い子どものための教材教具についてまとめた書籍です。
  教材教具が、写真、作製方法や指導方法とともに紹介されており、教材教具の開発と工夫のヒントを得ることができます。また、教材教具を通して、子どもの主体性や、
子どもとのかかわり合いを見直すきっかけを与えてくれる一冊です。

第1部 教材教具の意義と活用
  第1部では、相互交渉(コミュニケーション)とは何か、その構図及び教材教具を通した子どもとの相互交渉の在り方を明らかにしています。
  また、教材教具の具体的な話に入る前に、肢体不自由児、重い知的障害を伴う自閉症児、知的障害のある不器用な子どもなど、さまざまな子どもの障害の特性やつまずきやすい点、指導上の留意点をとても分かりやすく説明しています。

第2部 基本の教材教具
  第2部では、スイッチ、はめ板など、一九個の基本の教材教具を、特性、目的、指導方法、留意点、作製の手順を具体的に示し、分かりやすく紹介しています。

第3部 教材教具を用いた実践
  第3部では、第2部で紹介した教材教具に対応する実践を紹介しています。内容は、子どもの実態、教材作製の背景、ねらい、工夫点、指導経過、指導結果、考察とまとめの七点に分けて、指導事例を詳細に分かりやすく具体的に記述しています。
  実践のなかには、ねらいが十分達成した事例や、当初の予想とは違った経過をたどった事例も紹介されており、それぞれの事例において、その要因が分析して記述されています。
  なお、巻末には第2部と第3部の教材教具について、その主なねらいと実践事例との対応表が掲載されています。
  また、諸感覚、目の活動、手の把握の形、手の活動、運動姿勢、言語・コミュニケーションなどの発達と教材の系統化表が掲載されています。
  教材教具が障害のある一人ひとりの子どもの実態や課題に合わせて開発、工夫されることは素晴らしいことです。しかし、いくら素晴らしい教材があったとしてもそれだけでは子どもの学びや、子どもとのかかわり合いに結びつきません。教材教具と子どもの間に、大人が介在してこそ、子どもの学びやかかわり合いが成立するのです。 
  本書ではそれぞれの教材教具を使う子ども像が具体的にされており、指導に当たっては子どもの予想される反応を想定して待つこと、そしてその反応に合わせた共感的な言葉掛け、子どもの能動的な動きを引き出す段階的な指導など、実際的な指導方法が示されています。
  まさに「一人ひとりの子どもに学ぶ」という観点から執筆されている本書の活用をお勧めします。

東京都立江戸川養護学校 本岡 まい