平成十九年度から、全国の小・中学校において特別支援教育に関する取組が本格的に実施されます。本書は、通常の学級に在籍する特別な支援を必要とする児童生徒に対し、通常の学級の担任と学校内の教職員、外部の支援者がどのように連携し、協力体制をつくるかについて解説しています。
特に、米国の問題解決モデルを紹介し、米国での実践事例とともに、日本の小学校での実践事例を二つ掲載しています。後半では、より円滑に問題解決モデルを校内に浸透させるためのグループワークの方法も提示しています。
1 通常の学級の持つ力を最大限に生かす問題解決モデル
今の日本の学校では、特別な支援を必要とする児童生徒に対する担任の気づきから特別支援教育へと至る道すじが不明確で、各学校に任されているのが現状です。
そのため、問題解決モデルを導入することにより、問題への気づきから特別支援教育での支援までの流れを明確にしようという提案が、実践事例とともに紹介されています。その問題解決モデルでは、(1)学級内での支援、(2)校内のチームによる支援、(3)特別支援教育への照会の、三つに階層化されています。
通常の学級に六・三%在籍するといわれている特別な支援を必要とする児童生徒を、通常の学級が教科教育等で培ってきた指導と、特殊教育が培ってきた指導を組み合わせることにより、多くの児童生徒を学校内で支援する体制をつくろうとするものです。
2 連携協力するためのグループワーク
チームによる支援は特殊教育から特別支援教育への移行の中で大きな役割を担うこととなります。そのような中で、今までの日本の教師に求められがちであった「スーパーマン教師」による支援から、チームアプローチによる支援を目指すということが、本書が紹介している問題解決モデルの特徴となっています。
そして、本書の後半では、連携して協力するための能力を身につけるために、特別支援教育コーディネーター養成や校内研修に活用できるグループワークが紹介されています。ブレーンストーミングの手法を用い、小グループに分かれて行うものです。その中で、問題解決の論理的思考過程や、問題解決モデルの段階的な過程とそれによる評価、そのためのミーティングの仕方を身につけます。
具体的なシートや架空事例も紹介されており、すぐに活用できるようになっています。
3 ノウハウを裏打ちする理論
「すぐに活用できる」と書きましたが、本書はノウハウ本ではありません。前半の米国の問題解決モデルの解説部分は決して読みやすくはありません。しかし、その概要や背景を知ることで、その後の問題解決モデルの活用や研修の実施がより深まると感じました。
通常の学級の児童生徒一人一人への支援が、多くの人との連携協力によってより充実して、本書が活用されることを期待します。
山梨県立わかば支援学校 保坂 美智子
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