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医療的ケア研修テキスト
―重症児者の教育・福祉、社会生活の援助のために―

日本小児神経学会社会活動委員会 松石豊次郎・北住映二・杉本健郎 編

 
B5判 143ページ 税込価格3,150円 クリエイツかもがわ

専門医対象の研修
 本書のページをめくるとスライドのコマが何枚も目に入ります。タイトルのとおり医療的ケアに関する専門医対象の研修セミナーの内容を一冊にまとめたのが本書です。
 この研修とは日本小児神経学会社会活動委員会が、小児神経科専門医のための「医療的ケア」講師研修セミナーです。これまでに四回開催されています。社会活動委員会の活動や「医療的ケア」講師研修セミナーの内容については、本号「医療的ケアの最前線」で石井光子氏が詳細に紹介してくださいました。
 「医療的ケア」講師研修セミナーが行われるまで、医療的ケアの指導は各地でばらばらに実施されていました。本書のまえがきによると「学校現場、入所施設、家庭で指導する機会の多い小児神経科専門医への教育的な見地、統一したレベルの高い『医療的ケア』の幅広い普及の観点から本セミナーが開始された。」とあります。

内容について
 専門医対象の研修セミナーの内容をまとめたものですが、決して難解なものではなく、専門用語などは欄外に丁寧な説明が載せられています。スライドがそのまま掲載されていますので、図や写真も多く、例えば呼吸管理の項では、姿勢の工夫や補助具を使った下顎の保持の方法が一目瞭然で分かります。
 本文はスライドに対応した説明になっていて、スライド番号が付記されているので、読みながら、研修を受けているような印象です。
 内容は第一章の「医療的ケアとは」で医療的ケアの意義や対応の経緯、教育的関わりについてなどが解説されています。以降、「呼吸管理 呼吸障害」「気管切開の管理」「摂食嚥下障害、経管栄養、栄養管理」「外科的視点からの経腸栄養管理」「間欠導尿法」と続いています。

CD−ROM付き 
 本書にはCD−ROMが付いています。開いてみると、胃食道逆流や誤嚥のレントゲン映像を動画で見ることができます。とくに誤嚥の映像は、食物が気管に落ちてきたかと思うと、肺の中に一瞬にしてぱっと広がってしまう様子がはっきりと写っています。その様子を目の当たりにして、こんなに一瞬にして入ってしまうものなのかと驚きを隠せないのと同時に、日々の摂食指導の中で今まで以上に誤嚥について配慮していかなければならないと思いました。映像は何よりも説得力があります。

終わりに
 特別支援学校に通う子供たちの主治医の多くは、学校内での医療的ケアの実施に積極的に協力しています。本書が上梓されたのもそのような背景があってのことでしょう。第一章に記されている「教育的関わりとしての医療的ケア」を、教員としてとらえ直し、専門医の方々と更なる連携を取り合い「いのち」を育てていきたいと思いました。

東京都新宿区立新宿養護学校 武 井 純 子