「特別支援教育」とは
本書では、平成19年4月1日より法令に基づいて始まった特別支援教育について、実際にどのように変わったのか、制度改正の内容や現場での実践例などについて分かりやすく解説されています。
転換の背景と制度改正
第1部第1章では、特殊教育から特別支援教育に転換された背景について解説されています。盲・聾・養護学校に在籍する児童生徒の障害の重度・重複化、小・中学校等に在籍する児童生徒への適切な指導と必要な支援を行うことの必要性について等、具体的な数字や図を提示しながら述べられています。また、第2章では、学校教育法の一部改正について、教育職員免許の一部改正について、詳しく解説されています。
特別支援学校での取組
第2部では、次の6章で、特別支援学校における取組のポイントが示されています。
第1章 特別支援学校を目指した学校づくり
第2章 一人一人のニーズに応じた教育の推進
第3章 授業の改善
第4章 専門性の向上
第5章 センター的役割への期待
第6章 医療的ケアへの対応
それぞれの章は、概説と共に豊富な事例が挙げられています。
例えば、第1章では、「複数の障害種に対応した学校」の事例の一つとして、京都市の事例が挙げられています。そこでは、「これまで、障害のある側からない側へ、ノーマライゼーション化を要求していましたが、今度は、自分達、障害のある側のノーマライゼーション化を目指す」ために、地域制の総合支援学校を設立したと述べられています。障害種別による学級編成は行わず、カリキュラムは児童生徒の「個別の包括支援プラン」に基づいて編成された取組が行われています。
小・中学校等での取組
第3部では、幼稚園、小・中・高等学校での特別支援教育について述べられています。事例の一つとして、茨城県の小学校では、「支援する児童を障害のある児童に限定せず、さまざまな困難を抱えている子どもたち全てを支援」するために、「配慮を要する児童に対する支援委員会」を作り、事例検討会等を通して情報を共有すると共に、きめ細かな支援を行っている取組の内容が紹介されています。
Q&Aと参考資料も
この他に、各部にはQ&Aが多く添えられ、特別支援教育についての理解がさらに深められるようになっています。また、巻末には参考資料として、法令・通知、答申・報告が掲載されています。
本書を味読し、特別支援教育に転換された意義を理解し、行政や学校内の組織から担任一人一人の立場で新たな取組を行わなければならないことが理解できました。
特別支援教育にかかわるすべての人びとにとって役立つ書籍であると思います。
神奈川県立三ツ境養護学校 佐世 ちひろ
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