日本肢体不自由教育研究会ヘッダー
 

肢体不自由のある子どもの自立活動ガイドブック

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所
 
B5判 101ページ 税込価格1,400円 ジアース教育新社

1 自立活動に関する教員研修に必要な情報が詰まった書

 平成十三年度に全国の盲・聾・養護学校を対象に行った国立特殊教育総合研究所(当時)の自立活動に関する調査結果によれば、肢体不自由養護学校の91%が校内の全体研修として自立活動に関する教員研修を行っています。その研修テーマは、自立活動の全般的な考え方や指導内容に関するテーマが多く設定されています。
  本書では、このように自立活動に関する研修を進めるために必要な情報が、コンパクトにまとまっています。また、本書は四章から構成され、「調べる」ための章と「読む」ための章に分けることができます。
 
2 自立活動について「調べる」

 「第Ⅰ章 自立活動概論編」では、「自立活動とは何か」「自立活動の指導の進め方」「個別の指導計画」「現行の学習指導要領と教育課程の編成」について、裏付けとなる学習指導要領等と照らし合わせつつ、解説しています。自立活動の全般的な考え方を研修等で伝えるには、裏付けとなる学習指導要領等の知識は欠かすことができません。

 「第Ⅱ章 自立活動に関するQ&A」では、前述の調査の際に実際に各校から出された課題について答えています。そのため、ここで取り上げられた45の課題の中には、読み手の疑問と重なるものがきっとあると思います。
  また、課題をかみ砕き、問題の所在を明らかにして具体的提案を行うことで、提案がより納得しやすくなっています。さらに、複数の課題で、その実践例も紹介しています。

 「第Ⅲ章 自立活動の現状と今後」では、自立活動に関する調査結果とともに、今後の特別支援教育における自立活動の展望について述べています。

3 他校の実践を「読む」

 特別支援学校(肢体不自由)の自立活動の取組というと、自立活動の時間に行う身体の動きに関する取組という印象が強いかもしれません。
  しかし言うまでもなく、自立活動は学校の教育活動の全体を通して行う必要があり、その内容は「健康の保持」「心理的な安定」「環境の把握」「身体の動き」「コミュニケーション」の5つの区分で示された幅広いものです。「第Ⅲ章 学校事例集」では、個々の子どもに必要とする項目を複数取り上げ、相互に関連づけて指導する取組をたくさん紹介しています。
  また、自立活動における個別の指導計画の活用や評価の工夫に関する取組も紹介されています。
  本書のタイトルに「肢体不自由のある子ども」とありますが、障害種別にかかわらず、学ぶところが多い一冊です。特別支援学校の知的障害部門に勤務する私も、本書から再度自立活動について見つめ直そうと思いました。

山梨県立わかば支援学校教諭  保坂 美智子