ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、2001年に世界保健機関(WHO)総会において採択されました。これは、人の生活が心身機能・身体構造、活動と参加、そして環境因子、個人因子、健康状態で構成され、それらは相互に影響し合うという考え方に基づいています。
学校卒業後、一人一人が地域に参加し、豊かな生活を過ごしていくために、教育現場で何をすべきなのかが、大きな課題の一つとなっています。
以下に紹介する、本書のICFの考え方や実際の取り組みは必ずやそのヒントになるでしょう。
第1章 あらためてICFとは何か、そしてその活用とは
ここでは、ICFについて、図や表を交えての概要説明がされています。またこのICFの考え方を学校現場の中でどのようにして活用すべきかが記されています。
第2章 特別支援教育におけるICF活用の実際
第2章からは実際に特別支援学校の中でICFの考え方がどのように活用されているか、7つの事例が取り上げられて報告されています。個別の教育支援計画策定、授業改善、チェックリストによる医療関係者との連携、特別支援学校のセンター的機能における取り組みなど、幅広く紹介されています。
第3章 ICFを活用していくための様々な取り組み
この章では、ICFをより効果的に活用するための取り組みが紹介されています。例えば、生活の場である寄宿舎の中にICFの視点での支援の方策について詳しく書かれています。また難しく感じるICF関連図の作成の手順が図例を交えてわかりやすく説明されています。また、発達障害のある子供にも活用した事例も記されています。
第4章 ICF活用のための研修と理解啓発
この章では学校全体、保護者や地域を含めた、ICFの理解啓発や研修の取り組みがいくつか紹介されています。
第5章 特別支援教育関連分野等でのICFの活用
就学前、成人、高齢者まで幅広くそれぞれの段階での活用と課題について紹介されています。
第6章 ICF及びICF―CY活用を巡る様々な動き
子供に対応するICFである、ICF―CYについての概要説明をはじめ、国立特別支援教育総合研究所での研究概要等が記されています。こうした考え方を活用する意義としては、「その人個人の生活」を重視するということに尽きます。各校の取り組みの中にヒントが見つかります。是非ご一読ください。
なお、平成17年4月に、本書の前段として発刊されている『ICF活用の試み― 障害のある子どもの支援を中心に ―』も併せてお読みいただけば、より一層理解が深まると思います。
東京都立城南特別支援学校教諭 鈴木 崇宏 |