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肢体不自由教育シリーズ2
コミュニケーションの支援と授業づくり

監修 日本肢体不自由教育研究会
 
A5判 240ページ 税込価格 2,310円 慶應義塾大学出版会

 本書は、肢体不自由教育シリーズ1として2007年8月に刊行された『肢体不自由教育の基本とその展開』に続き発行されたシリーズ2です。肢体不自由教育におけるコミュニケーションの考え方とその工夫、さらに授業改善に役立つ優れた授業実践の事例がまとめられています。

 肢体不自由教育の授業づくりでは、子供と教員、子供同士でのやりとりなど、コミュニケーションの進展が基本となります。本書では、肢体不自由教育におけるコミュニケーションの考え方とその工夫を平易かつ簡潔に紹介し、日々の授業改善に役立つ理論と実践について具体的に迫っています。

 本書の特徴として、次の点が挙げられます。 

  • 肢体不自由教育での授業のポイントと指導のエッセンスを網羅。
  • 日々の授業の質を高めるために、優れた事例を豊富に紹介。
  • コミュニケーション支援機器やツールなどの分かりやすい説明。
  • 重度・重複障害のある子供の授業や役立つ教材・教具の工夫を紹介。

第1章 肢体不自由教育におけるコミュニケーションの支援
  まず、第1章では、一人一人の子供に的確なコミュニケーション支援を行う上で重要となる考え方やアプローチの仕方について解説しています。

 コミュニケーション指導・支援における基本的枠組み、ことばが出始めるまでの子供の表現活動の変化、ことばの発達と評価、肢体不自由児の特性に応じた具体的な支援の考え方、AACの基本的な考え方について述べられています。

第2章 よりよい授業づくりをめざして
  ここでは、個別の指導計画と授業計画、授業評価等との関連と活用、授業研究を通した授業づくりの在り方、各教科の指導における原則と工夫、教材・教具の作製における工夫、自立活動の実践について紹介されています。

 このような授業づくりにあたって検討すべき必要な視点について述べられています。

第3章 障害に応じた授業の実践
  授業や指導の質を高めるためには、優れた実践を知ることが必要です。ここでは、7つの授業実践を紹介しています。

 AACアプローチによるコミュニケーション指導、自立活動の指導、アシスティブテクノロジーの活用、高等部訪問教育の取り組み、文芸活動(作文)の取り組み、個別の指導計画に基づく授業づくり、「自分から勉強を進める子ども」を育てる、です。これらの授業実践の論述を通して、読者は自らの授業改善につながる手がかりを得ることができるでしょう。

 現在、特別支援教育が推進され、肢体不自由教育における専門性の確立がますます大きな課題となっています。ぜひ、昨年発刊のシリーズ1『肢体不自由教育の基本とその展開』と、今年十月発行のシリーズ3『これからの健康管理と医療的ケア』も併せてお読みいただき、日々の実践に役立てていただきたいと思います。

京都立城南特別支援学校教諭 吉川 知夫