本書は「肢体不自由教育シリーズ3」として、子どもが安心して安全に学べる環境づくりのために、健康管理と医療的ケアについての手引き書として編集され、学校保健と健康指導の観点から「医療的ケアを教育活動としてどのようにとらえ実践していくのか」について、総合的にまとめられています。
医療的ケアの問題は、これまで教員が実施することへの法的なとらえや安全に実施するための体制整備などに力点を置いて語られることが多かったのですが、本書は、教育の一環として子どもの心に寄り添う医療的ケアをどのように進めていくのかという考えが貫かれています。特別支援学校(肢体不自由)の教職員にとって、必読に値するすぐれた書であると思います。
私が本書の中で興味をもった点を三つ紹介します。1つ目は、「子どもの心に寄り添う医療的ケア」という提案です。本文に「学校における医療的ケアは、教育の一環として、子ども自身による『自己実現・自分づくり』を支えるもの」とあります。日常の指導の中では、医療的ケアが必要であるけれども人生を豊かに歩もうとしている一人の人格として、子どもを尊重していく視点が大切であることを改めて思いました。
2つ目は、教育基本法などに基づきながら、学校保健としての医療的ケアが、法的根拠も含めて整理されている点です。保健教育・健康指導の一環として医療的ケアをとらえていくことで、生きる力の基盤となる心と体の健康づくりという学校教育全体の活動とのつながりが明確になりました。養護教諭はどのように医療的ケアにかかわるのか、また看護師とどのように仕事が違うのかは、わかるようでわかりにくいのです。学校保健という視点から整理していくことにより、その要としての役割の大きさを再確認できました。
3つ目は、「医療機関との双方向的な連携の取り組み」です。医療機関との連携の大切さはわかっているものの、主治医などに指導していただくという関係になりやすく、どうやって進めたらよいのか悩む問題です。「小児リハビリテーションネットワーク会議」という取り組みは、とても画期的だと感心しました。学校の視点で医療的ケアを進めがちですが、子どもは学校だけで生きているわけではありません。本当は当たり前なのですが、地域リハビリテーションの一つとしての学校というとらえ方をすることにより、医療関係者や福祉関係者と連携を図りながら、地域生活を豊かにしていくという視点が新鮮でした。今、卒業後の施設での医療的ケアが課題になってきています。青年・成人期の豊かな暮らしを創るためには、地域の人的・物的・制度的環境を整備することが大切なのだということに改めて気づかされました。
本書には、歴史的変遷や各地の先進的な実践が掲載されています。本書を読むと、健康管理と医療的ケアに関する教育活動が、全国の多数の仲間によって、日々積み上げられて充実してきていることを実感できます。本書を読み終えた時、自分も一緒にがんばりたいという勇気がもらえると思います。
埼玉県立越谷養護学校教諭 竹脇 真悟 |