本書は客観性や信頼性を高める評価法の工夫と改善例について分かりやすく記述され、「評価と授業改善のための概論編」「授業改善に役立つQ&A編」「評価・授業改善に向けた学校の取組」から構成されています。
1 評価と授業改善のための概論編
第1章では、授業改善のための基本的な視点がすべて整理されています。学校全体として、授業改善への課題点の把握や改善の方向性をつかみ、一つ一つの授業の改善について検討する指針をもつことができるように説明されています。
「学校で実施されている毎日の授業が最も大切である」といわれるように、日々の実践の中で、個別の指導計画から授業計画を作成する流れについて、概論が述べられています。
2 評価・授業改善のためのQ&A編
第2章は、評価と授業改善に関する「基本的な事項」「評価と目標設定」「授業実践・改善」の観点から質問に対して、肢体不自由教育における多様な教育課程、指導形態や指導方法等で生じてくる課題に対しての授業のあり方等を中心に、基本的な事柄について説明されています。用語を整理したり、実際に授業改善を行う上で参考になります。
3 評価・授業改善に向けた学校の取組
第3章は、評価や授業改善に向けた特別支援学校として特色ある取組の実際が紹介されています。
個別の指導計画を基本に授業計画を立て、実践につなげる取組では、評価の観点を共通理解するためのシートが検討され、細かな評価が行われています。
作業学習の複数担当者間の共通理解・相互理解を図るための手だてとして、「代案」を活用している取組では、段階評価表を作成し、活動内容の見直しを図ることで具体的な目標設定や手だてを設定することが可能となっています。
実態把握と目標設定に関する「準ずる教育課程」での取組は、肢体不自由のある子供に対する身体面だけの配慮だけでなく、認知特性等に関する配慮が必要であり、教科の評価と合わせた支援の手だてを工夫したこと、また、「自立活動を主とした教育課程」での取組では、チェックリストを実態把握だけでなく、発達の順序性の観点をもった評価として活用しています。
4 授業の評価・改善に向けて
特別支援教育へと真に転換していくためのポイントは、毎日行っている授業が進化していくことだと思います。そのためには、学校全体としての教育力の向上が求められている今日において、授業の改善を目指した取組が各学校で必要とされ、適切な実態把握、実態に応じた目標設定、日々の授業の評価をきちんと行い授業を改善していくこと、また保護者へ説明する責任を果たすことが求められています。
本書を読むことで、授業改善を目指した評価のあり方について理解し、授業改善への手だてを知ることができます。
福岡県立田主丸養護学校 副枝 厚子 |