特別支援教育が始まり、3年が過ぎ、学校関係者だけでなく、医療、福祉、保健、労働といった分野との連携が進み始めています。平成17年度には、特別支援学校が中心となって障害者基本計画や重点施策5か年計画に基づいた「個別の教育支援計画」を策定してきました。
本書では、障害のある子供たちを地域や学校全体で総合的に支えていく仕組みとして、特別支援教育の概念について解説されています。また、支援体制のキーパーソンである特別支援教育コーディネーターに必要な関連知識を中心に、分かりやすく解説と紹介がされています。
第1章 特別支援教育概論
この章では、特殊教育の歴史概説があり、特殊教育の変遷が分かりやすく紹介されています。また、特別支援教育の在り方から中教審答申等の内容があり、特別支援教育体制について理解できます。
第2章 社会保障制度の概要
特別支援教育コーディネーターだけでなく特別支援教育にかかわる人にとって、障害者に対する社会福祉制度の基礎的な知識を学ぶ必要があります。ここでは、社会保障制度や障害者福祉関係法など表図等で分かりやすく記されています。また、措置制度のしくみや支援費制度、障害者の雇用関係、生活保護制度など、障害のある人にかかわる方々が知っておくべき社会保障制度を知ることができます。
第3章 特別支援教育コーディネーター
特別支援教育コーディネーターの役割は、個々の子供のニーズに応える支援と校内や地域などの教育活動全体をコーディネートする協働関係を促進する役割があります。この章では、小・中学校等の事例や特別支援学校での事例など具体的な例から対応の仕方、対策が紹介されています。また、コーディネーターに必要な資質としてアセスメントの方法や評価、スキルアップの方法などの概要も説明されています。
第4章 社会資源の開発と運用
この章では、特別支援教育における主な社会資源として、5つのカテゴリー(教育・福祉・医療・司法・労働)から、障害のある子供たちが社会の一員として歩み出すために必要な社会資源の活用について紹介されています。特に、それぞれの社会資源同士の連携と活用について事例をもとにサポートネットワークのモデルを詳しく説明されています。
第5章 個別の教育支援計画の策定
この章では、個別の教育支援計画の策定にあたり、その目的や内容、支援、評価、引き継ぎ等の留意事項が分かりやすく説明されています。また、具体的な策定の仕方について小学校の事例をもとに紹介されています。
特別支援教育コーディネーターの理念と基本的な考え方を理解するために役立つ一冊と思います。
千葉県立銚子特別支援学校 古山 勝
|