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肢体不自由教育シリーズ4
専門性向上につなげる授業の評価・改善

日本肢体不自由教育研究会 監修
 

A5判 259ページ

税込価格 2,310円 慶応義塾大学出版会

授業づくりからの専門性向上

 本書は、特別支援教育への移行を機に、肢体不自由教育における専門性をどのように向上させていけばよいのかについて、「授業づくり」や「評価」の観点から編集されています。教育ニーズが多様化してきている昨今、求められる専門性も広範囲な領域にわたっています。第一章ではその専門性の概要と実際について述べています。

  第2章「授業改善に生かす評価と授業研究」では、評価をどのようにして授業に生かしていくかという視点から解説し、続く第3章「評価に基づく授業実践」で、具体的な目標設定の仕方や指導方法を紹介しています。

今日から始められる授業改善

 教員にとって、「時間がない」ということは共通の悩みです。そこで本書の内容で、今すぐに取り組めそうな授業改善を紹介します。

  第1章4節「肢体不自由教育の専門性をめぐって」の中に「授業の自己評価の観点―授業改善のために―」という表があります。放課後に、その表の10の項目(働きかけの評価、教材・教具の使い方、授業の流れの組み立て方など)に沿って、授業を振り返ります、この作業を続ければ授業改善のツボを見つけることができるのではないでしょうか。

  第2章1節「教育活動における授業改善と評価」の中では、授業改善に結びつく会議のもち方などについても触れています。どの学校でも指導略案などを基に話し合いを行っていると思いますが、第3章1節「評価に基づいて授業の質を高める」で紹介している「目標準拠評価の設定サンプル表(適切・不適切)」に照らし合わせて、再度指導目標を確認するのはとても役立つと思います。

  普段使い慣れている「表現」を、他の教員と一緒に具体的な活動として確認していく作業の中で、必要となる指導が明確になってくるのではないでしょうか。

さらなる授業改善へ向けて

 第4章「授業改善に生かす指導の要点」では、中・長期的に取り組む内容である「子どもの困難さや学び方の基本」ついて解説しています。4節「チーム・ティーチングによる授業づくり」では、複数の教員と協力し合いながら授業をつくり上げていく長所と短所について触れ、授業づくりの計画・準備、指導の実際、評価における工夫の仕方を紹介しています。本書は、授業を仲間と作り上げていく上での課題を共有化する際の指針となるでしょう。

  今後、本書を礎に多くの実践がなされ、それらの実践を再び教員同士で共有することによって肢体不自由教育がより豊かになることを願っています。

(東京都新宿区立新宿養護学校主幹教諭 引地 隆一)