障害をもつ子どもたちへの指導の中で、特に安全面での配慮が必要となるものの1つが摂食です。
最近では、様々な職種の方々が摂食指導に関心を寄せるようになり、研修会なども数多く開かれています。
本書は、日本肢体不自由児協会が発行している機関誌「はげみ」において、2号に分けて特集した「摂食・栄養」「摂食・栄養2」の内容を合わせて単行本にしたものです。
摂食障害への援助を行う上で「安全に確実に」そして「楽しく」食べることが大切であるという視点から、歯科医や小児科医だけではなく、作業療法士や栄養士、教員等が執筆しています。
「安全に」食べるために
本書は、誤嚥についての内容から始まります。最近では重度の障害児・者だけでなく、高齢者や中途障害者の誤嚥による事故も見られるようになり、誤嚥について知ることは大切です。その上で、姿勢の工夫や介助の仕方について学習していくとよいでしょう。
また、一人一人の摂食機能に合わせた食物形態や調理方法の工夫も、安全に食べることにつながります。栄養への配慮も必要です。
「楽しく」食べるために
食事では、コミュニケーション、食べる意欲、自分で食べる力などが大切です。子どもが自分で食べるようになる援助を通して、食事動作の習得だけでなく、社会性の基礎も養われるということが、本書により、よく分かりました。
一方で、経口摂取を心理的に拒否している子どもがいます。私も担当したことがありますが、その指導はとても難しかったです。「遊び感覚」を大切に、根気よく続けていこうという応援のメッセージを本書から受け取りました。
本書の構成
1 「誤嚥」についての理解と、対応の仕方
2 子どもに合わせた食事の姿勢の工夫
3 食べさせにくい子どもへの介助ー口周辺の介助を中心にー
4 自分で食べることへの援助 ースプーン・箸・食器の工夫、 姿勢の工夫ー
5 食べる意欲が乏しい子どもへの援助
6 年長児〜成人の重度脳性麻痺児者の摂食嚥下障害への援助の取り組み
7 咀しゃくや嚥下に問題を抱える子どもの“食"への取り組み 〜北九州市特別支援学校の取り組みから〜
8 摂食嚥下障害のある障がい児者への献立及び調理方法の工夫 〜安全で美味しく豊かな食事への取り組み〜
9 食物形態と再調理のポイント
10 トロミ調整食品の特徴と使い方
11 障がいのある子どもの栄養の量と内容や、水分の量など
12 栄養剤の種類とそれぞれの特徴
本書は、写真や図なども多く、分かりやすく書かれています。
初めて摂食について勉強する方にも、今までに学んだことがある方にもおすすめできる1冊です。
(千葉県立野田特別支援学校 松浦 雅子)
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