本書を上梓した「つみき」は、昭和48年に「障害児グループつみき」として誕生しました。重度の障害があるために、就学前施設に通園することがままならない子供たちのために、土曜日の放課後に養護学校(当時)の一室を借りて自主保育を行ったのが始まりだそうです。その後、学童期の子供たちや社会人のための活動も行うようになり、緊急一時保護も実施しています。当初は肢体不自由児がほとんどでしたが、今では年齢も障害も幅広く多様な人たちが利用しています。
NPO法人となり、「つみき」には三つの活動グループができました。「放課後クラブつみき」(通所訓練事業)、「つみきの家」(宿泊訓練事業)、「デイサービスつみき」(自立支援に基づく事業)です。規模が大きくなっても、「つみき」は仲間と一緒にのんびり過ごせる場所であることには変わりないと言います。
手記とアドバイス
そんな「つみき」に集まってきた父母たちが自らの子育てについて、現在も奮闘している様子を書いてくれました。
どの手記を読んでも、状況も障害の様子も異なり、苦労や困難も同じものはありません。もちろんその困難を乗り越えてきた過程もそれぞれです。保護者の方たちはこんなにもそれぞれの思いを抱えているのかと、改めて今自分が担任している子供たちが成長してきた道のりにも思いをはせました。
20編の手記のどれにも共通していることは、辛くてくじけそうになったり、分からなくて混乱していたりするときに、必ず助けてくれる誰かがいたことです。
本書の特徴は、子供の成長に沿って各章が記述されており、手記だけではなく、支援者からの助言も寄せられていることです。
第1章では、障害の告知を受けた時期の手記が集められ、保健師の方から仕事の内容の紹介と、保健師が最初の相談窓口になることが助言として寄せられています。
第2章では、就学前の手探りの子育ての時期の手記が集められ、子供と母親たちにずっと寄り添ってきた「つみき」の保育士さんからの助言が載っています。
第3章では、学校に通っている児童生徒の保護者の方たちの手記が集められています。特別支援学校の校長先生から、学校選びの段階での助言が寄せられています。
第4章の思春期から大人までを扱った章には、「つみきの家」のスタッフが、学校を卒業した人たちが「つみき」に集ってどのような日常生活を送っているのか、その一部を紹介しています。
保護者の思いに寄り添うこと
これから障害をもった子供の子育てをしていく父母の方の手助けになればという思いから作られた本ですが、特別支援学校の教員にとっても、とても参考になる本です。
今は明るく元気な保護者の方たちも、色々な思いの中で子育てをしてきたのだろうということ。悩んだり、気持が揺れている保護者の方にどのような助言をしたらよいのかなど、教員が考えるためのヒントを与えてくれると思います。
どの手記も、最後に紹介されている「つみき」の様子も、明るく前向きで元気をもらえる本です。
(東京都新宿区立新宿養護学校 武井 純)
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