異なる分野が連携して支援を
本書は、平成21年度障害者保健福祉推進事業の一環として実施された「障害児施設の一元化に向けた職員構成に関する調査研究」に基づいて、執筆されました。子供の育ちに対して、個人のライフスパンや共に生きる社会という視点から、医療、教育、福祉、法制度など異なる分野が連携し、継続的に支援していこうという願いがこめられています。
本書は次の5部から構成されています。
第1部 「発達支援の意味と役割」
第2部 「発達支援の技法と理論」
第3部 「発達支援の日常実践」
第4部 「発達支援に関わる制度」
第5部 「発達支援と医療」
「発達支援学」の理論的な基盤や具体的な技法、実践例の紹介、法制度、医療に至るまで全分野の内容が網羅され、分かりやすく解説されています。目次に各部の内容が簡潔に記載されているので、知りたいキーワードを手がかりにして、読みたいページをすぐに開くことができます。
発達支援の意味と役割
第1部では特に、発達を支援する立場としての基本的な視点や家族支援について言及しています。執筆者は発達支援における基本的課題をリンゴの樹として表現し、子供本人をリンゴ、家族を葉、地域生活を木幹と例えて、発達支援者が取り組むべき具体的な支援策を提言しています。「リンゴや葉、枝や幹が生長するには、地中に伸びた根が必要な水や栄養を十分に供給することが不可欠である。」と、子供の権利の保護や保障にも触れています。この「リンゴの樹と支援課題の対比表」を見て、私たち教員を含む支援者の役割は、子供だけではなく、子供を中心に据えた家族や地域社会という三層構造を意識した総合的な支援を行うことであると理解できます。
肢体不自由の子供への支援
肢体不自由の子供に関する内容としては、第2部の「脳性麻(ま)痺(ひ)の運動障害の考え方とその実際」、第3部の「粗大運動面・姿勢や移動能力を育(はぐく)む」、第5部の「基礎疾患」「合併症とその対応」などが参考になります。
第3部の「発達支援の日常実践」は、障害別に内容を区切らずに、「こころの育ち」や「見る力」、「食べる力」「みんなと活動する力」など、子供の成長に必要な力ごとに項立てされています。教育以外に医療や福祉の視点からみた発達の捉(とら)え方に気づき、学ぶこともできるため、経験のある教員にとっても知識を深めることができます。課題に対する解決策を知るだけではなく、子供の持つ力を発見し、さらに伸ばして育てていく実践方法を学ぶことができます。
第5部の「発達支援と医療」では、基礎疾患の説明や健康管理、合併症とその対応が具体的に記載されており、特に医療的なケアが必要な子供に関わる方には、日常の指導に参考となる内容です。特別支援教育に携わる方は、ぜひお手元に置いてご活用ください。
(筑波大学附属桐が丘特別支援学校 大塚 恵)
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