「MOSES」とは、ドイツ語圏の多くの施設で使われているてんかんの学習プログラムです。「日本語版あとがき」に、「本書は病気のある人が一人で読むことを意図してつくられたものではなく、病気についての知識、病気と向き合う方法について、他の患者さんや関心のある人、そしてトレーナーと能動的な意見交換をしながら学ぶ、小グループでのトレーニングのためのテキストです」とあります。
序章では、MOSESの説明をするとともに、てんかんに関する用語集、参考書籍などを掲載しています。第1章から第9章までの各章では、冒頭にその章のテーマと目標、章末にワークシートとまとめを載せています。参考書籍やサービス利用・相談の窓口等の紹介もされています。
本書の大きな特徴は、各章末のワークシートです。例えば「第4章 診断」では、「どのような診断方法を私は知っているか」という現状確認から始まり、「脳波はどうして重要なのか」「睡眠脳波や長時間脳波は何の役に立つのか」「脳の画像写真は、医師にどのような情報を与えるのか」という解説の内容を読者自身が整理し、記入します。その上で「病気の経過をよく知るために、自分でどのような情報を書き留めておけばよいか」と行動目標を記入できるように構成されています。
本書は16歳以上向けであることに加えて、特別支援学校の児童生徒の多くは知的障害があることを考えると、校内でてんかんのある児童生徒に直接読ませるという活用方法は難しいかもしれませんが、てんかんに関する情報が分かりやすく1冊にまとめられている点、書き込みを通して情報を整理できる点においては、有益な本です。
(山梨県立甲府支援学校 保坂 美智子)
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