本書を開けるとたくさんの写真が目に入ってきます。どれもが手作りの教材ですが、ヨーグルトのカップやペットボトルのふた、ガムテープの芯など、身近ですぐに用意できるものを活用した教材です。
みなさんは子供と一対一で向き合って学習に臨むとき、何から始めればいいのだろうと悩んだことはありませんか。本書をめくると、「お盆の上の筒をとる」ことも十分に子供の学習活動になることが分かります。それが分かると、「お盆の位置を変えたらどうか」「筒の大きさを変えてみようか」と、自分が担当している子供の様子から学習活動を広げ、色々なバリエーションを考えることができます。
1章の「教材を用いたアセスメント」では、教材を用いて子供の実態をつかむ方策が述べられています。「水口・大高教材アセスメント」は写真で課題が示され、評価のポイントが具体的に示されています。2章の「一人ひとりに合わせた教材の工夫」では、エピソードも交えて事例を紹介しながら、アセスメント表のそれぞれの段階の指導が述べられています。アセスメント表以前の段階の子供の指導事例も載せられています。重度の障害があり、視力も随意的な動きもない状態の子供に、著者が四苦八苦しながら、においと触覚からのアプローチをしていった事例は非常に興味深いものがあります。肢体不自由の事例もあり、「こんな教材なら、操作ができるかな」と参考になります。3章では「文字学習につながるシール貼りワーク」が掲載されています。
本書では、教材を使った指導の中で子供と指導者とのやりとりを成立させ、子供が相手を意識して自発的に学習に参加していくことが大切である、という姿勢が貫かれています。
(東京都新宿区立新宿養護学校 武井 純子)
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