養護学校教師にとって、 身体の動きに関する指導について研修を深めていくことは必須条件です。 ただし、 どの指導方法も文献を熟読してある程度の理論体系を理解できたとしても、 肝心の援助の方法は自分と相手との身体の動きを通したかかわりですから、 独学で習得をするというわけにはいかないはずです。
動作法の研修方法も例外ではなく、 研修会や地域の訓練会に参加して、 理論や技法といわれる援助の方法を学んでいくことになるでしょう。 ところが、 本書において著者が指摘するように、 動作法を学んでいる多くの人が 「指導を受けたときにはわかったような気がするのですが、 いざ自分自身で実践してみると難しくてわからない」 といった体験をするのではないでしょうか。 もちろん、 こんな体験は、 養護学校教師だけではなく、 動作法で親子訓練をしている保護者の方々や施設などで動作法をやってみようとされている方々も同じように経験されていることでしょう。
本書の内容は、 大きく二部構成になっていて、 前半は動作法の理論である基本的考え方、 後半は子どもの問題点の見つけ方、 訓練計画の立て方、 技法といわれる援助の方法などが書かれています。
本書の特長は、 何といっても具体的な援助の方法について絵をみながら確認できるところにあります。
動作法では子どもと身体を動かして いくときに 「動作の要素として、 部位、 方向、 強さ」 が重要とされていますが、 初心者にとってこの三つを習得していくことが難関です。 ですから、 絵の中に実技研修で覚えたことを自由に書き込んでいける本書のような 「サブノート形式」 はとても使いやすいと思います。
また、 本書では 「ナビゲーション形式」 と記されているように、 自分の覚えたい訓練だけを追っていけるように工夫されています。 訓練の進め方も関連する訓練は何ページを開けましょう、 発展する訓練は何ページを開けましょう、 と書かれているので参考になると思います。
このように 「はじめの一歩」 の内容を中心とした本書は、 動作法を学び始めたすべての人にとって、 知りたい情報が網羅されているのですから、 まさにうってつけの参考書といえるのではないでしょうか。 動作法の研修が 「形のものまね」 だけに終始しないようにするためにも本書をうまく利用できるとよいと思います。
最後になりましたが、 著者の四氏は筑波大学附属桐が丘養護学校において動作法を学校現場でどう生かすか、 という視点で長年研究をされてこられた先生方で、 地域の訓練会の指導者としても活躍されております。 日本肢体不自由児協会から発行されている 「動作訓練入門」 の著者でもあります。 本書とあわせてご一読をお勧めします。
千葉県立仁戸名養護学校教諭 尾崎 至
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