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支援から共生への道
―発達障害の臨床から日常の連携へ―

田中 康雄 著
 

B5判 246ページ

本体価格 1,800円 慶應義塾大学出版会

 本書は、田中康雄氏が児童精神科医になりたてのころから現在までの臨床経験をもとに書かれた著作です。田中氏の患者への支援や医師としての役割などについての考えが、田中氏自身の中でどのようにして形成されてきたのかが、綴られています。

 発達障害、不登校、虐待など、「生き辛さ」を抱える患者を前に、「僕に何ができるのだろうか」と自問自答しながら筆は進みます。そこには、私たち教員にとって、学ぶべき多くのことが語られています。

 発達障害児への早期療育、医療と教育の連携した支援などが、日本でもようやく進展しつつあります。しかし、早期療育を進めようとするあまりに、障害児の病名(診断名)をつけることを急ぎ、目の前の子供をよく見ないという、臨床現場での弊害なども問題視されつつあります。また、特別支援教育が制度として普及していく中で、現場の教師に相談者がいないこと、通常の学校での特別支援教育へのとまどい等の問題も生じています。

 そのような中で田中氏は、治療という診療室での行為だけでは子供の真の援助にはならない、という視点から自ら担任教師や学校をたずね、福祉や地域社会の関係者とも連携をとるという、従来の医師の枠を越えた活動に取り組んできました。また、「生き辛さ」という障害がある人たちと共生する社会をつくることを目指し、支援や連携をどのように進展させたらよいのかを考えています。

 そして、このような支援や連携を考える人々が増えることにより、「社会を変えていくこと」ができるという思いを抱きつつ、本書を刊行したのです。

(東京都立城北特別支援学校  植竹 安彦)