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重症児者の防災ハンドブック
―3.11を生きぬいた重い障がいのある子どもたち―

田中総一郎・菅井裕行・武山裕一 編著
 

A5判 235ページ

本体価格 2,200円 クリエイツかもがわ

 東日本大震災では、全国で二万人弱もの方が犠牲になりました。人工呼吸器や痰の吸引など「医療的ケア」が常に必要な重い障害のある子供(人)たちが、3.11をどう生きのびたのか、被災した宮城県内の医療センターや特別支援学校の被災時の様子やその支援の記録や教訓から得た災害時の備えと防災マニュアルが、必要な機器の写真・リスト付きでまとめてあります。実際に被災した重度の障害のある方々の状況をまとめたものとしては、この書籍が初めてです。

 第1章では、停電やガソリン不足の中、地域、医療現場、特別支援学校、避難所のそれぞれの場で何が起こっていたのかが、手に取るように分かります。安否確認や現場のニーズの把握から始まり、救援物資の要請・配送・分配、人材の確保と支援のコーディネートなど、協力してくださった関係機関との日ごろからの連携が、この活動を円滑にしています。

 第2章では、ライフラインが遮断された時の医療機器の電源確保について、具体的な電源や停電時に使用したい在宅医療機器や家電、自家発電機などについても取りあげています。中でも、家庭での備えとして、石川県肢体不自由児・者父母の会が作成した「HELP」カード(災害時のサポートカード)の取組は参考になりました。また、外部支援者のコーディネーションを円滑にするためのネットワークの重要性についても述べられています。

 本書は、単なる災害対策だけでなく、地域で暮らす重症児の日常的な生活を支える仕組み(こんな子供が町内に住んでいること、地域でレスパイト<一時保護>を受けられること)の大切さを教えてくれました。日々、障害の重い子供たちとかかわる、すべての方々に読んでいただきたいと思った書籍です。

(東京都立北特別支援学校 木村 直美)