てんかんをもつ児童生徒は、定期的に医療機関に通院し、薬物療法で発作をコントロールしながら日常生活を送っています。学校生活を送る上で、教員がそのてんかんの特徴や服用している薬について知っておくことはとても大切です。
本書には、てんかんの薬物療法の基本的な内容と、これまでに使われている薬から最新の薬まで、たくさんの薬についてわかりやすく書いてあります。巻頭に、「抗てんかん薬の種類」として一般名と商品名の一覧表があります。個々の薬について知りたい時は、この表を活用しながら第2章を読み進めます。
第1章 てんかんの薬物治療
この章のはじめには、てんかんの分類が載っています。抗てんかん薬を知る前にてんかんそのものについての理解は必要です。
てんかん発作の特徴からは、部分(焦点、局所)発作と全般発作(けいれん性・非けいれん性)に分類しています。てんかんのタイプからは、@部分てんかん、A全般てんかん及び症候群、B焦点性か全般性か決定できないてんかん及び症候群、C特殊症候群、の4つに分類してあります。いずれも、薬物治療で抗けいれん剤を決定する際にもとになるものです。
てんかんの理解をした上で、てんかん発作型と薬の選択について読むと理解が深まります。他にも薬が作用するメカニズムと血中濃度や、治療中の注意点、緊急時に使う薬などについても述べられています。
第2章 抗てんかん薬の歴史と各薬剤の適応
私が本書を手にした時に、最初に開いたのがこの章です。まずは、担当する子供が服用している抗てんかん薬について知りたいと思ったからです。
この章では、一般名ごとに薬の解説がしてあります。先に述べた「抗てんかん薬の種類」の表を見て、薬の商品名からその薬の一般名を探し、解説のページにたどり着きます。ここでは、適応や服用量、副作用などについて知ることができます。その後、担当する子供が薬を変更することになり、新しく処方される薬の解説も同様にして読みました。
第3章 抗てんかん薬のQ&A
普段から気になっている基本的な疑問について答えています。
「薬を飲み忘れたときはどうすればいいですか」「副作用のない薬はありますか」「震災に備えて薬を保管しておきたいのですが、たくさん処方してくれますか」など全部で12の質問があります。
以上の他に、トピックのコーナーでは「血液の中でお薬はどうなってるの?」「相互作用のおこるわけ」「肝臓で代謝される薬とされない薬」の3点について解説してあります。また、薬の副作用についても説明されています。
本書を手元に置いておくと、抗てんかん薬の情報が必要になった時に、薬の辞書のように活用することができます。てんかんをもつ児童生徒にかかわるすべての人にお勧めしたい1冊です。
(千葉県立野田特別支援学校 松浦 雅子)
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