30年目の改訂
発達診断について厳密に、しかし非常に簡便に書かれています。約3時間あれば読了できる分量です。本書は約30年前に発行された『発達の気がかりな乳幼児の早期発達診断』と『乳幼児と障害児のための早期発達診断検査用紙』(小林倫代共著、1982年)の新訂版です。ベテランの先生方の中には、これらを手に取ったご記憶のある方も多いと思います。
「第Ⅰ部 発達支援の起点・原点」では、発達テストを、発達の水準と輪郭を知るための「発達スクリーニング検査」と、発達の現況と将来性について詳しく知り発達課題を把握するための「発達診断検査」の2種類に分け、公刊されている「発達テスト」の一つ一つについて検討しています。私たちが発達テストを活用しようとするときに、大変参考になると思います。
また、発達支援の原点である「生活リズムの確保」「身体の鍛練」「コミュニケーション関係の確立」それぞれの発達テストの仕方について、具体的で段階的な提案がなされています。特に「コミュニケーション関係の確立」の項では、発達水準に応じたコミュニケーション関係の中で、大人が取るべき基本姿勢について、場面に応じて述べられています。どの内容にも、子供の能動的な活動を引き出す姿勢が貫かれており、自分の日々の子供へのかかわり方を振り返らずにはいられませんでした。
支援計画を立案するために
本書の中では、「個別の指導計画」を「個別の発達支援計画(以下、支援計画)」と呼んでいます。
「第Ⅱ部 早期発達診断の検査の活用」の第6章では、支援計画を立案するにはどうしたらいいかについての提案がなされていま
す。
支援計画を作成するときには、一人一人の子供の実態を把握し、何が課題であるのかを考えていきます。そのとき、皆さんの学校では、何をよりどころとしていますか。私は自立活動の学習内容表等を参考にして、その子供の実態から目標を取り出すことが多々ありますが、その方法では、次の目標への見通しがあいまいで、担任が変わると目標設定の視点も変わってしまうこともあります。
本書では、支援計画を作成することを含みながら、発達診断検査の解説が展開されています。それは、検査項目が「大人の支援があればここまで伸びる」という観点で設定されていること、発達診断検査で必要なことは「子供の発達課題をとらえることであり、発達年齢や発達指数を出すことではない」という著者の姿勢からも理解できます。
簡便で簡潔に述べられている中に、目の前に子供の発達を捉え、新しい発達を引き出すという教育の基本の姿勢が貫かれていることに、深く引き込まれていきまし
た。
*「障害の重い子の早期発達診断検査(新訂版)」はジアース教育新社から発売されています。10冊1セット3,000円(本体価格)です。
(東京都新宿区立新宿養護学校 武井 純子)
|