「授業力向上のために」
学校現場で教育に携わる教員は、日々、誰もが「児童生徒のために、少しでもよりよく授業をしたい。」と考えています。最近の特別支援学校(肢体不自由)では、授業改善の取組が広がってきています。
本書の監修者の一人である分藤賢之先生(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課特別支援教育調査官)は、「授業改善の取組が、授業の何を改善しようとするのか、その意図(改善の切り口)を明確にして取り組むことが大切である。」と述べています。
本書では、授業改善のテーマを明確にした21の実践例と知肢併置校における授業改善のマネジメントの実際が紹介されています。実践例は、特別支援学校(肢体不自由)の研究大会等における発表から選出された、優れた取組が集約されています。本書の実践から得られた知見を教員間で共有し、明日からの授業づくりに生かすことができるように、監修者の願いと期待がこめられています。
「生きる力」に直結した授業づくり
本書では、「体験的・問題解決的な学習及び自主的、自発的な学習の促進」、「課題選択や自己の生き方を考える機会の充実等」、「自立活動の時間における指導との関連」、「訪問教育における指導の工夫」など、様々な授業改善のテーマが紹介されています。
例えば、「姿勢や認知の特性に応じた指導の工夫」をテーマにした実践では、小学校の理科における方向や方角の指導に焦点を当て、教科の下支えとなる自立活動の指導と関連させながら、学習上の困難に対する指導の工夫を行った実践の成果と課題について、具体的に分かりやすく紹介されています。
前述の分藤先生は、「本書で紹介する授業改善のテーマに基づく実践は、児童生徒が自立し社会参加を目指すために必要な『生きる力』の育成につながる実践でもある。」と言及しています。
授業を検証し、改善につなげる
本書では、肢体不自由児を教育する特別支援学校の教育課程や「個別の指導計画」、「表現する力」の育成に焦点を当てた指導の工夫・授業展開についても、丁寧に解説されています。
さらに、授業者が改善を思考するために活用したツールや写真が掲載されており、指導の流れや改善に至った様子が読み手にもよく分かる内容となっています。
本書を読むことで、日々の授業を検証しながら、授業改善につなげていく示唆を数多く得ることができます。手元に置いて、ぜひご活用ください。
(筑波大学附属桐が丘特別支援学校 竹田 恵)
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