体験への不安を先輩教員として支えていきたい
私の勤務校でも、年間、複数の大学から、170名ほどの学生が「介護等の体験」のために来校します。
私は、体験当日、学生には「あなたがしてもらって、うれしかったことをすればよいのです。あなたがされて嫌なことは、子供も嫌ですから。」と話をしています。承知しました、とばかりに笑顔を見せてくれる学生はいますが、多くの学生は緊張した表情のままです。無理もないことで、障害のある子供とのかかわりということでは、家族や友達などに当事者がいれば、多少の見通しをもつことはできますが、多くの学生は「初体験」であり、子供たちとどう接してよいのか、不安な気持であることは間違いないと思います。
私も微力ながら先輩教員の一人として、教員志望である前途有望な学生たちの不安な気持はしっかり受け止め、支えになりたいと考えています。体験を通して、子供たちとのかかわりが楽しい、と感じてもらえればうれしく思います。
そのためには、介護等の体験に臨むにあたり、①「体験前」の準備に関すること、②「体験中」の配慮事項に関すること、③「体験後」の振り返りに関すること、この3つの視点で学生に対して取組を具体的に解説し、指導する必要があります。
実用的な内容で活用しやすいハンドブック
本書は、前ページで紹介した全国特別支援学校長会編著、特別支援学校における介護等の体験に関するテキスト「フィリア」の続編として編集されたガイドブックです。「フィリア」は、理論や教育制度など指導者側の視点に立った記述が多くを占めています。
本書「フィリアⅡ」は、続編として、実際に介護等の体験を行う学生の視点で執筆されていて、実用的で活用しやすいハンドブックとなっています。
本書は、大きく三つに分けた構成になっています。
第1部「ルールとマナー」では、「体験前」に関して、体験に臨む際の心得、事前準備についてまとめられています。学生に対して、分かったふりをしないで、教員に質問をするように説いています。分かったふりでは、新たな学びはできないと指摘しています。
第2部「そもそも論」では、「体験中」や「体験後」に関して、体験中に絶対やってはいけないこと、常識的にしてはいけないこと、望ましいマナー、の数々がまとめられています。また、障害特性についても解説があります。
第3部は、「身体障害者補助犬の話」「知っていると便利な専門用語」「指文字・五十音表」についてまとめられています。
本書は、学生向けのハンドブックであると同時に、学生たちの学びを支える特別支援教育関係者にとっても、貴重なガイドブックとなるでしょう。
(千葉県立八千代特別支援学校 尾﨑 至)
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