日本肢体不自由教育研究会ヘッダー
 

発達支援実践塾 ―聞けばわかる発達方程式―

編著 木村 順・川上康則・加来慎也・植竹康彦 / 著 発達障害臨床研究会
 

B5判 168ページ

本体価格1,500円+税 学苑社

ここに、その子がよくみえ る、メガネになる本があり ますよ!
 学校現場で教育に携わる教員は、誰もが「児童生徒の気持ちを理解したい。その子の笑顔を見たい。よりよい授業をしたい」と考えています。本書は、そのような現場の教員と、発達障害支援を志す方にとって、心強い1冊となることは間違いありません。
 本書の編著者の1人である加来慎也先生(茨城県立美浦特別支援学校教諭)は、特別支援学校の教員になった当時のことを、「教室には入ろうとせず、ひたすらグルグルと回っている教え子に『どう声をかけようか』と、途方に暮れる日々を過ごし、(中略)小学校の経験だけでは彼らに対応できない不甲斐ない自分にイライラしながら、当時の教職生活をスタートさせた」と述べています。そんなある日、発達臨床研究会(通称:宇佐川研)で、宇佐川浩先生と出会います。
 宇佐川浩先生が「発達につまずきのある子どもたちから学んだ事実」を体系化したものは、「感覚と運動の高次化理論」と呼ばれ、この理論をもとに子どもを見ると、これまで分からなかったこの子の行動の意味や、発達上のつまずきがクリアに見えてくるようになった、と記されています。

事例から学ぶ
 本書では、「事例から学ぶ」ことを大切にしてきた宇佐川研で育まれたことが、基礎編、解説編、実践編に分けて紹介されています。
 基礎編では、基礎的な視点や知識を、Q&Aの形式で紹介してあります。特別支援学校のさまざまな児童生徒の発達のつまずきを理解するための手立てを、明確に述べてあります。
 解説編では、宇佐川研の骨格である「感覚と運動の高次化理論」(通称:宇佐川理論)と、その感覚・運動を分かりやすく紐(ひも)解くための「感覚統合理論」についての大枠を解説します。
 実践編は、まさにケーススタディです。本研究会のスーパーバイザー(故宇佐川浩先生も含む)のアドバイスをもとに、4つのケースに向かい合い、仮説を立て、実践の取組を丁寧に紹介しています。①ケーススタディの背景、②成育歴とこれまでの発達支援の状況、③「感覚と運動の高次化理論」から考える、④「感覚統合」から考える、⑤経過とまとめ、という共通の柱で実践の経過を見ることで、子どもたちの成長ぶりが読み手にもよく理解できる内容になっています。

実践に活かす
 本書では、「感覚と運動の高次化理論」と「感覚統合理論」の大枠を述べていますが、読み進めていくうちにもっと理解したい、深く知りたい、実践できるようになりたいという気持が湧いてきます。
 本書の実践から得られた知見を、「子どもたちとともに奮闘している方々が明日からの療育に活かしてほしい」。本書には、このような編著者の願いと期待がこめられています。手元に置いて、ぜひご活用ください。

(東京都立北特別支援学校 木村 直美)