文部科学省では、「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方―論点整理―」(平成26年3月31日)を、まとめました。教科等の学習を通じて、育てたい子どもの姿を考え、学校の教育目標と各教科等の目標・評価を実質的に結び付けていく必要が指摘されています。もちろん、障害のある子どもにおいても同様です。
しかし、特に障害の重い子どもにおいては、教員が目標設定に迷うことが多いのではないでしょうか。子どもの学びの状態が一人ひとりで異なり、目標設定の基準が明らかでないことが、その原因と言えます。本書は、そうした障害の重い子どもの学びの到達度を把握し、適切な目標設定を実現するための手がかりとなる考え方を提案し、実践で活用できるツールとしての「学習到達度チェックリスト」を紹介する実用書です。
子どもの学びと「学習到達
度チェックリスト」
第1章は、「学習到達度チェックリストと子どもの学び」についての概説です。「学習到達度チェックリスト」の開発の経緯と特別支援学校の教育課程の実際から目標設定の考え方との関連を整理しています。
第2章「学習到達度チェックリストの概要と特徴について」では、学習到達度チェックリストの概要と特徴を紹介し、教科と発達の視点で整理することの必要性を論じています。
「学習到達度チェックリスト」の使い方と活用例
第3章では、「学習到達度チェックリストの使い方と留意点」として、学習の到達度評価と目標設定の実際について解説し、作業シートの活用とその記入の仕方を紹介しています。
第4章「学習到達度チェックリストの活用例」には、①障害が重度な子どもの活用例、②知的障害のある子どもの活用例、③その他の活用例(日常生活の指導、生活単元学習、音楽科の指導など)が紹介されています。
より有効な活用と新たな
チャレンジへ
第5章「学習到達度チェックリストの発達段階とその意義」では、実態把握(学習評価)と目標設定を行う際の留意点、特に発達段階の意義を踏まえることの重要性について解説されています。
第6章「チェックリストの課題、新たなチャレンジ」では、これまでのチェックリストを活用した成果を踏まえた上で、あくまでも現時点は、「これまでの研究と活用・実践を踏まえての改訂の繰り返しによる到達点である。授業を見直すツールとして、その質を高めていくために活用が広がり、実践者からの情報が貴重な手がかりとなる。」と、編著者は述べています。
この「学習到達度チェックリスト」や各シートの電子データは、購読した人に限り、Webページよりダウンロードし、使用することができます。本書は、知的障害のある子どもの授業に、成長を引き出す視点と変化を見出す手応えを求める教師に活用していただきたい1冊です。
(国立特別支援教育総合研究所総括研究員 長沼俊夫)
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